川柳の上達法 ⑧ 想 い
1) 想いの伝達
僅か17音で想いを伝達しなければならない川柳においては、想いを伝達させるための磨き抜かれた
表現技法が必要となる。その表現技法を習得するためには、何が必要なのかを考えてみたいと思う。
① 想いを分散化させない、焦点を絞ること。(初心時代には、複数のことがらを詰め込もうとしてしまう。)
② ひとりよがりの想いに満足しないこと。(自分だけにしか分からないことは、読者には通じない。)
③ 想いを飛躍させ過ぎないないこと。(心象句の場合には、時には難解句となってしまう恐れが生じる。)
④ 想いを説明し過ぎないこと。(一句が冗漫になってしまい、説明川柳・報告川柳となってしまう。)
⑤ 5音・7音・5音のどこで想いを伝達すべき句なのかを判断すること。(作品によって、力点を置くべき
ところを描くこと。
☆まだまだ有るとは思うのだが、一句を生かすのも殺すのも想いをいかに言葉に置き換えて、適切に表現
するかが問題となるのである。
2) 伝達の参考句
① 友逝きて思い出あふれ出る涙 課題・涙
悲しみを表現するのであるから、逝き・思い出・出る涙、と言葉を連ねてしまうと、単なる悲しみの
報告になってしまう。想いの焦点を絞る必要がある。
★添作句:友逝って心の底に浮く涙
② 川の字が責めを果たして二本棒
★添作句:川の字の一本へって核家族
③ 一年の紙の仮面よシュレッダー 岡崎 守
紙の仮面が分かりづらいかもしれない。男なんて薄っぺらな紙の仮面を日々取り替えながら、
食わんがために闘っている。そしてその溜まった紙の仮面をシュレッダーで裁断するのである。
④ きのこ採り欲ばりすぎて道迷い 課題・欲
そのままの状況描写となってしまった。説明・報告の句から一歩抜け出すためには、いかに想
いを凝縮するかであり、言葉の選択に気を使うかが大切である。切れ味のある句を生み出す努
力が必要である。
★添作句:きのこ採り欲をさそって迷い道
3) 想いへの力点
想いを表現するとは、心の深部にある欲求を文字化することなのだが、想いと文字化の結び付きを
いかに上手くするかが問題なのである。表現を上達させるためには、次のようなことが考えられる。
① 想いを一枚の絵としてイメージ化する。
② そのイメージに向かって文字化すること。
③ 5音・7音・5音を単なるブロックとして考えないこと。
④ 17音を結合体として考えること。
⑤ その17音のどこにポイントを置くか考えること。
⑥ 漢字とひらがなのバランスを考慮すること。
⑦ 想いを重複させた言葉の使用に注意すること。
⑧ 特に助詞を有効活用すること。
⑨ 想いをリズム感のある一枚の絵として完成させること。
⑩ 自分で披講し、余韻・余情を確認すること。
☆想いを17音に託す階段を上ることである。
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