川柳の上達法 ⑦言葉の選択
1) 言葉を生かす
僅か17音で心の深い想いを表現するのであるから、いかに的確な言葉を選択するかが問題となる。
生きた言葉を組み合わせることによって、生きた一句が吐き出され、命のある一句として感動を与える
ことになるのであるから。
言葉を生かすとは、常に新鮮な言葉を生み出すことではないし、新鮮な言葉など簡単に創出できる
はずもない。日常の言葉を駆使していかに巧に組み合わせられるか、そして新鮮に感じさせられるか、
が作句者としての喜びであり苦しみなのである。
生きた言葉とは、作句者の詩性や感性から生み出される、言葉の組み合わせの美学なのである。
それゆえに、万人が同一となりえるはずもなく、個々人が持ち合わせた美学の中で創出すればいい
のである。だが、その美学は研くことによって成長を重ねるのであるから、日常の努力を忘れてはなら
ない。
2) 語彙を広げる
① 常に国語辞典を見ているか。
② 文字を間違って覚えてはいないか。
③ 代替の言葉を意識しているか。
④ 漢字の意味性に溺れてはいないか。
⑤ ひらがなを巧に使っているか。
⑥ 意味が重複した言葉を使用してはいないか。
⑦ 助詞を生かしているか。
作品の広がりとは、言葉の組み合わせの広がりであり、語彙の広がりである。そして、心と頭の広がりで
あり、理性と感性の広がりであるのだから。
3) 言葉の選択
よりよい一句を生み出すためには、解説型(説明型)・報告型からいかに抜け出すかが基本となる。
① 当たり前のことを解説しただけで、発想そのものが散文的になってはいないか。
② 常識的な一般論を述べただけではないか。
③ ある事象を報告しただけで「そうですか」と答えざるをえない経過報告になっていないか。
これらを解決するためには、言葉の選択にいかに注意を払って一句を生み出すかにかかってくる。
川柳さっぽろ11月号「あかしや集」のゴシック作品を参考にしてみよう。
○草食系男子に末来託す鬱 高宮 まゆ未
現在を鋭く切り取っている。下五を「託す夢」としたなら、解説型になってしまう。鬱によって作者
の批判精神が描出され、人間模様が巧に表現された。
○不器用な接吻ひっそり生きている 今 えい子
老いを老いとして表現するのであれば、高齢化社会の中で生かされているのであるから、当た
り前のことになってしまう。老いという文字を使わずにいかに老いを表現するか、それが作者と
しての醍醐味なのである。ひっそり、の言葉によって老境をうまく表現した一句となった。ひっそ
りを「老いと」にしてしまうと、解説型になる。
○贅沢は回転寿司で皿を積む 加藤 富清
贅沢ならばカウンターで時価の寿司を食べる。回転寿司は贅沢なのか、時価の寿司を食べら
れないから行くのである。庶民が安めの皿を積むのが贅沢なのだ、と表現したことによって、
ユーモアと風刺が生まれた。贅沢はを「安いから」にすると、単なる説明の解説型になってしまう。
○老人になりすましてる介護棟 大谷 礼子
この句の場合の老人は、なりすましているのであるから、老人という文字を使わざるをえない。
老人ばかりの介護棟の中で、私は若いんだと主張できない心の疼きがある。
なりすましてると客観的に描出したことがこの句の命である。老人を「若者に」としてしまうと、
諧謔味がなくなってしまい解説型となる。
4) 言葉は生き物
ちょっと視点をずらすための言葉、発想の転換を図るための言葉、意表を突くための言葉、などを
選択する喜びを感知しなければならない。それが解説型などから一歩抜け出すための、重要な言葉
の選択となる。
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