川柳の上達法 ㉕ 川柳の連想力
1、連想
連想とは、山から川を思い浮かべるように、一つの観念につられてそれと関連のある他の観念を思
い出すこと。観念とは、観察し思念すること。
川柳での一句を生み出す時に、何を最初に考えるのであろうか。
題詠の場合であれば、題に関連した事柄を思い浮かべて一句を生み、同想とならないように二句目
を生み出す。ある意味においては、題詠の場合は連想しやすいと言える。題に対してのイメージを膨
らませることであり、客観的な視点を駆使させることによって、句を生み出すことが可能である。
ところが雑詠の場合は題が無いのであるから、自己の心象を主観的な立場で見て描出しなければ
ならない。そのためには、いかに連想を膨らませるかが重要となる。
僕の場合は、例えば「あかしや集」で四句生み出す時には、先ず二ヶ月先を頭に入れて一句を生み
出す。そして関連性を持たせるように連想を膨らませている。
川柳「さっぽろ」平成25年12月号 「あかしや集」・岡崎 守
善と悪かさねたページ消す齢
空白を埋めた一句に積もる酒
一年のアクを流してソバの音
夢おって七十路の轍きしむ靴
あくまで12月号の発表を頭に置いて、一年間の総括としての句を思い描くのである。10月に12月の
句を作るのであるから、あくまでも想像句であり、実感句ではないのかもしれない。しかし、体験や
経験を基にしての句であるから、僕の実像から離れた物語ではない。
2、連作吟
僕は「水脈」誌には、毎回十句ずつ連作吟を発表している。一句では対象を切り取ることが不可能
なので、複数作品によるテーマの多面的な追求と、一つのテーマによる連続的な作詠を目指して
いる。
「水脈」平成二十五年十二月号・「石」岡崎 守
狂乱の地球と回る石の馬
石わらう仮面ばかりの風狂詩
雑踏の石ころ 平和なる愚問
巨石うごめき 愚かなる瀬音
大小の石だ強弱ヒンプとは
子砂利が吠える日章旗がわめく
議事堂は無風なり反骨の石
古里は消失こなごなのいしよ
やわらかな石だ 狂ったニンゲン
やすらぎのまなこ嫋嫋たる石ころ
連作吟を続けることによって、一句からの発想の展開を広げることができ、作品を生み出すために
は効果的な技法だと思っている。
連想力を研くためには、以下の要素が考えられる。
①最初の一句で言いたいことを思い描く。
②一句目の舞台を拡散し掘り下げる。
③舞台を逆転や暗転させる。
④思いを凝縮させて膨らませる。
⑤白い画布に多面的な絵を描く。
連想力を膨らませることによって、視界が広がり、色彩が豊かになる。ということは、無尽蔵の言葉と
の結びつきが生まれ、果てしの無い作品が生まれる可能性を持たせてくれる。一句からの広がりの
世界を生み出す脳の働きに感謝し、大いに脳に刺激を与え続けたいと思う。
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