川柳の上達法 ⑲ 言葉の入れ替え

 

  1、言葉の入れ替え

      五・七・五音の定型を守るためには、言葉の音数をしっかりと把握して作句することが基本である。

      一句ができた時に、音数の確認をすることが重要であり、安易に妥協してしまうことによって、定型

      を損ねた作品が生み出される。では、どのようにして定型の作品を生み出せば良いのであろうか。

        ①五・七・五になっているかを必ず確認する。

        ☆音数を確認する。一度声を出して句を読んでみる。リズム感の悪さに気がつく。推敲する。

        ②上六・中八・下六になっていないかを確認する。

        ☆上六や下六の場合には、中七に言葉を入れ替える

      ことができるか否かをチェックする。

        ③全体的な句の流れとリズム感を確認する。

        ☆絶対に十七音でなければならない訳ではない ので、字余りや字足らずであっても、句姿

          が良ければ推敲の必要は生じない。

 

 2、入れ替えの事例

      平成25年1月号川柳さっぽろ「幌都集」作品より。(原句は□、添削句は〇

        ①上六の作品を拾ってみる。

           □イノベーション昭和支えた菜っ葉服

          〇昭和史をイノベーションと菜っ葉服

          〇昭和史を支えた技術菜っ葉服

          □白内障手術のあさの涙雨

          〇手術する白内障の涙雨

          □精一杯生きて自分を解放す

          〇解放す精一杯に生きた過去

          □忍耐力生きる力の隠し技

          〇生きるため忍耐力の隠し技

         ②中六・中八の作品を拾ってみる。

           □人生譜答えなんか見つからぬ   五・六・五

          〇人生譜答えなんかは見つからぬ

          □原発の安全神話がにじり寄る   五・八・五

          〇原発の安全神話にじり寄る

          □亜麻の花咲いてた工場更地なる  五・八・五

          〇亜麻の花咲く工場が消え更地

        ③中八・下六・下七の作品を拾ってみる。

          □老化かな昔は良かった義理人情  五・八・六

          〇老化かな義理人情を思い出し

          □リバイバルソングになって僕の青春

          〇リバイバルソングになって青春譜

 

3、工夫 

      ちょっとした言葉の入れ替えの工夫によって、いく らでも定型に直すことが可能となる。これらの

      作品を見ても分かるとおり、推敲を大切にしていないことが分かる。もしくは、推敲をするための

      技術や時間がなく、そのままで投句しているのかもしれない。

       初心の時代は、定型にまとめることが大変なのだろうが、作句の基本として頭に叩き込む必要が

       ある。またベテランになったとしても、陥りやすいことなので気をつけなければならない。

       いかに言葉をうまく組み合わせるかが重要なので、音数の数え方を常にチェックすることが大切

       であるである。言葉をいかに生かして使用するか、十七音のリズムをいかに大切にするかが、佳

       句への道へと誘ってくれる。

       推敲の技法とは、常に初心に帰ることであり、定型を守る意識を持ち続けることである。基本を習

       得することによって、応用の技法も付いてくる。推敲とは、自己の作品に責任を持ち、世に送り出

       すことである。