川柳の上達法 ⑯ 中八
1、中八
「上五音、下五音が不動の三句態で、中句が八音となり、音数のトータルが十八音となる場合。
ただし、句渡り、変格切れの場合や、一章が二句態の場合などは、中八と呼ばない。中八は中八
音であることが一章のはたらきとなっていることが前提で、ただいたずらに音数だけが一つ余計に
なったというのでは、マイナスにしかならない。
昼下がり 花咲く予感の バスに乗る 靖 子
は、中八・十八音だが、
こぶしひらいても 何もないかもしれぬ 三 柳
は、トータル十八音だが、変格二段切れで、中八とは区別して考えられる。変格とは、五・七・五の
三句態(正格)とは句切れ、音調、ともに異なるが、気息的には三句態に還元して読み得る総音数
十七の作で、正格のバアリエーションと見なす。
死んだってねと 人様の 話する
音数律は七・五・五となり、上五の二音が中七へ食い込んだ形(これを「句渡り」とよぶ)だが、全体
としてのリズム感は損なわれていない」。
『川柳総合大事典・第三巻用語編』より引用
2、中八の罪
「中八は絶対に駄目」とか「中八は採らない」とか言う人がいるのだが、何故なのだろうか。中八の
欠点をあげてみよう。
①一句のリズム感を崩してしまい間延びしてしまう。
②一字が多いことによって説明的になる。
③いらない助詞をなんとなく使っている。
④中八になるのは未熟な証拠という意識がある。
参考例をあげてみよう
節電にトイレの神様くしゃみする (神が)
モデルでもやせ過ぎ禁止と妻は説き(駄目と)
詐欺なのに銀行に走るおやごころ (走る銀行)
盆躍り手拍子揃えて輪を描く (揃え)
中八を直すことは簡単なのだが、なかなか推敲をする気にはならない。必ず指を折って数えてみる
習慣ををつける必要がある。と同時に、置き換える言葉を探すことも重要である。
選者としては、中八の作品は一読してリズム感の悪さが気になるので、先ず没句にする確立が高く
なる。披講がしづらいし、出席者にとっても耳で聞く川柳としては聞きづらく感じる。
3、中八句は避ける
川柳きやり(東京・竹本瓢太郎代表)十一月号(№1095)には、以下のような文章がある。
「このところ字余りの句が目立つ。きやりの句会に出席している社人、誌友は、字余りの句は入選
の対象外で、それを選者が抜いても没になることを承知しているので字余りの句は出句しないし、
社人は他の句会や大会に出席しても定型を厳守している」。
川柳きやり吟社では、雑詠欄も句会報でも字余りの句は載っていない。これだけ定型を遵守してい
るのは珍しい。また遵守させてきた歴史にも感嘆せざるをえない。それだけ村田周魚の精神が徹底
されているのかもしれない。
字余りの句の中でも、特に中八の句は避けるべきである。どうしても中八が避けられない時には、
八・九や九・八の変格二段切れの句にしてみることも、川柳を作る上での技法としては必要である。
何事も絶対に駄目だ、と言ってしまうと余りにも発想の自由が拘束されてしまうので、ある程度の許
容値の範囲が必要である。あくまでも句姿は尊重して。
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