2023年11月号

 巻頭言

    「初心わすれるべからず」

 

      川柳は5・7・5で17音の定型を基本とする俳句と同様、世界で一番短い短詩型

    文芸の一つと言われています。

     最近、サラリーマン川柳や新聞などへの投稿川柳などで17音以上の音数で作句し

    ている作品を見かける事があります。17音は川柳のひとつのルールです。川柳より

    長い歴史の和歌には、31音以上の作品はほとんど見られません。作句にあたっては

    常に17音を意識したいと思っています。

     大正9年に東京で産声を上げた「川柳きやり吟社」では5・7・5、17音以外の

    句は柳誌に掲載されません。百年以上もの間このルールは守られています。各川柳

    社(会)によっては考え方も目指す方向も違いますので、一概には言えませんし、川

    柳に正解は無い!と思っていますが、やはり定型は守りたいです。

     「川柳さっぽろ」でも、中八、下六の句を見かけることがあります。中八、下六

    を容認している川柳の参考書も見かけます。決して否定をするわけではありません

    が、260年もの歴史のある文芸ですから、出来れば5・7・5、17音のリズムで

    作句したいものです。音数の確認を句の提出時にしっかりすることも必要でしょう。

     今年、川柳を始めて30年目の節目の年になります。今一度初心に戻って、5・7

    ・5と指を折りながら作句した日々を思い出して、17音の世界を楽しみたいと思い

    ます。❝初心忘れるべからず❞なのです。

        

           今一度初心にかえり五七五   佐藤 芳行

 

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      【あかしや集】:岡崎  守 選

 

    ・年金で鰻秋刀魚が食えぬ国       佐藤 正文 ・・・ 特選句

    ・値上げにも愚痴は言うまいなんもさと  石川 黎華 ・・・ 秀 句

    ・原発の海がさ迷う世界地図       荒井とも子      〃

    ・汚されていつか仕返しする地球     柴田加奈子      〃

    ・沸騰の夏遠く去りところてん      小林ともき      〃

    ・帰郷して木綿の風に癒される      清水 玲子      〃

    ・錦秋の藻岩へうたい出す絵筆      木村 規子      〃

 

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        【ぽぷら集】:松本 淳子 選

 

    ・思春期の頁ツンツンしてみたり     小杉山雅子 ・・・ 特選句

    ・異議はある其の何倍もありがとう    橋本利恵子 ・・・ 秀 句

    ・地球はや酷暑酷寒二季となり      福島あけみ      〃

    ・躓いた石はあのとき置いた石      石出 栄光      〃

    ・待合室無言瞑想修行僧         中津 遊水      〃

    ・札束でトイレ貸せよと核のゴミ     相澤 重明      〃

    ・よそ行きの言葉羽織って子の帰省    大坪 寒流      〃

 

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       【幌 都 集】:澤野優美子 選

 

    ・どん底の片袖だけの貌になる      浜  正吉 ・・・ 金鈴抄

    ・練り上げる辛抱強く聞く力       高橋 節也      〃

    ・無くなってお部屋は狭くなりました   飯澤 理子      〃

    ・鉢花を日脚に合わせおもてなし     田村のぶ江      〃

    ・シンプルに生きて自由な最終章     佐藤 園江      〃

    ・粘っても勝てなかった恋いくさ     一家  汀 ・・・ 秀 句     

    ・口輪筋声帯鍛え「あいうえお」     澁谷ノリ子      〃

    ・煌めいた過去だけ残す宝石箱      亀貝えみ子      〃

    ・潮騒を読んで三島が好きになり     桐澤都志子      〃