2022年8月号

 

 巻頭言

    「歴史の重さ」

  

     それぞれの川柳人が、命と歴史の重さを実感しながら、毎日作品を生み出していま

            す。川柳が川柳人が好きだから、と思って続けているのではないでしょうか。

     川柳さっぽろ誌は、8月号で773号となりました。創刊号は昭和32年2月15日です

    から、65年の歴史を重ねました。数多の人たちの汗の結晶によって、絶えることなく

    積み上げられてきたのです。

     今僕は3冊の本を横に置いてこの原稿を執筆しています。北海道川柳史(斎藤大雄著)、

    札幌川柳社五〇年史(五〇年史刊行委員会)、北海道川柳連盟五十年史(五十年史発行

    委員会)、ずしりと心に響いてきます。

     1冊ずつに刻まれた川柳の歴史には、果てしの無いエネルギーが迸ります。そのパワ

    ーによって更なる一歩が積み上がるのだと思っています。苦境の時だからこそ、パワー

    が求められます。目には見えない小さなパワーが。

     コロナ禍やウクライナの惨状を見ながら、人間を詠う川柳で今何が、と考えさせられ

    ています。弱い人間だからこそ結束力を、ささやかな夢を支えにして羽ばたく、マスク

    を外した明るい笑顔を取り戻して。元気を出して。

   

      「太陽がほら笑ってる歌ってる」  岡崎  守

 

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     【あかしや賞】:浪越 靖政 選

 

    ・玉串で受け取る傷心のしずく     藤澤美津子 ・・・ 特選句

    ・墓参り日傘に蝶がまといつき     酒井 麗水 ・・・ 秀 句

    ・渦巻きのようにこっそり消えた人   梶原 百華      〃

    ・金婚譜試行錯誤のミルフィーユ    荒井ともこ      〃

    ・おしゃべりもおしゃれも女生きる術  柴田加奈子      〃

    ・桜貝ほどの命を温め合う       清水 玲子      〃

    ・花が散る返らぬ時を刻みつつ     岩橋千代子      〃

 

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      【ぽぷら集】:佐藤 芳行 選

   

    ・抜きますか保存しますか二枚舌    岡崎 光子 ・・・ 特選句

    ・断捨離で掬った過去の独り言     東  考矢 ・・・ 秀 句

    ・この長寿先がまだある夢芝居     井上 サヨ      〃

    ・身の丈で余生を謳歌晴れた空     出雲恵美子      〃

    ・照れながら愛の賛歌を妻と聴く    大坪 寒流      〃

    ・二十日盆秋の気配の盆踊り      村上 辰雄      〃

    ・ぞっこんのシチリアレモン暑気ばらい    小杉山雅子      〃 

 

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      【 幌 都 集 】:落合 魯忠 選

 

    ・今日も無事ゆめの列車へ乗り換える  高橋 節也 ・・・ 金鈴抄

    ・やじろべい綿毛の重さ軽やかさ    飯澤 理子      〃

    ・守らない約束ばかりする小指     恵利 菊江      〃

    ・ヘップバーン真似てジェラード舐めてみる    長谷たみ子      〃

    ・母さんが笑うと僕も笑います     西嶋りょう子     〃

    ・見開く目ぎゅっとつぶる目まだ健在  福島あけみ ・・・ 秀 句

    ・エルメスの老眼鏡で見えるウソ    田村のぶ江      〃

    ・孫ひるね世界征服した顔で      佐藤 園江      〃

    ・忍の字を抱いて明日への始発駅    浜  正吉      〃