巻頭言
「歴史の重さ」
それぞれの川柳人が、命と歴史の重さを実感しながら、毎日作品を生み出していま
す。川柳が川柳人が好きだから、と思って続けているのではないでしょうか。
川柳さっぽろ誌は、8月号で773号となりました。創刊号は昭和32年2月15日です
から、65年の歴史を重ねました。数多の人たちの汗の結晶によって、絶えることなく
積み上げられてきたのです。
今僕は3冊の本を横に置いてこの原稿を執筆しています。北海道川柳史(斎藤大雄著)、
札幌川柳社五〇年史(五〇年史刊行委員会)、北海道川柳連盟五十年史(五十年史発行
委員会)、ずしりと心に響いてきます。
1冊ずつに刻まれた川柳の歴史には、果てしの無いエネルギーが迸ります。そのパワ
ーによって更なる一歩が積み上がるのだと思っています。苦境の時だからこそ、パワー
が求められます。目には見えない小さなパワーが。
コロナ禍やウクライナの惨状を見ながら、人間を詠う川柳で今何が、と考えさせられ
ています。弱い人間だからこそ結束力を、ささやかな夢を支えにして羽ばたく、マスク
を外した明るい笑顔を取り戻して。元気を出して。
「太陽がほら笑ってる歌ってる」 岡崎 守
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【あかしや賞】:浪越 靖政 選
・玉串で受け取る傷心のしずく 藤澤美津子 ・・・ 特選句
・墓参り日傘に蝶がまといつき 酒井 麗水 ・・・ 秀 句
・渦巻きのようにこっそり消えた人 梶原 百華 〃
・金婚譜試行錯誤のミルフィーユ 荒井ともこ 〃
・おしゃべりもおしゃれも女生きる術 柴田加奈子 〃
・桜貝ほどの命を温め合う 清水 玲子 〃
・花が散る返らぬ時を刻みつつ 岩橋千代子 〃
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【ぽぷら集】:佐藤 芳行 選
・抜きますか保存しますか二枚舌 岡崎 光子 ・・・ 特選句
・断捨離で掬った過去の独り言 東 考矢 ・・・ 秀 句
・この長寿先がまだある夢芝居 井上 サヨ 〃
・身の丈で余生を謳歌晴れた空 出雲恵美子 〃
・照れながら愛の賛歌を妻と聴く 大坪 寒流 〃
・二十日盆秋の気配の盆踊り 村上 辰雄 〃
・ぞっこんのシチリアレモン暑気ばらい 小杉山雅子 〃
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【 幌 都 集 】:落合 魯忠 選
・今日も無事ゆめの列車へ乗り換える 高橋 節也 ・・・ 金鈴抄
・やじろべい綿毛の重さ軽やかさ 飯澤 理子 〃
・守らない約束ばかりする小指 恵利 菊江 〃
・ヘップバーン真似てジェラード舐めてみる 長谷たみ子 〃
・母さんが笑うと僕も笑います 西嶋りょう子 〃
・見開く目ぎゅっとつぶる目まだ健在 福島あけみ ・・・ 秀 句
・エルメスの老眼鏡で見えるウソ 田村のぶ江 〃
・孫ひるね世界征服した顔で 佐藤 園江 〃
・忍の字を抱いて明日への始発駅 浜 正吉 〃