巻頭言
「器の花」
大地の器に、色とりどりの花が咲いています。その競い合う百花繚乱を鑑賞されることも
なく、無観客の人間たちを笑いながら、命を落としていきます。花々の悲しい吐息が聞こえ
てくるのを実感します。
新型コロナウィルスによって、日常が破壊されました。まるで人間たちの欲望と、人知を
嘲笑うかのように。終息への道程はまだまだ遠く、関係機関の従事者の皆さんの過酷な状況
が続きます。そして、感染者への差別と排除が広がっています。悲しい現実です。
札幌川柳社での感染者の話はありませんが、各地での句会は8月から始まりました。句会
場の器には、沢山の笑顔の花が咲きました。自粛を強いられていた月日を思いますと、どれ
だけ句会を通しての結び付きが大切なのかが、実感として心に沁みました。単に句を作るだ
けではなく、心の結び付きや幸せの時を分かち合える素晴らしさに、感動を覚えました。
人間は、それぞれの器の中で生かされ、器の広がりによって愛や幸福や生や死を教えられ
て、自らの花を咲かせられるのだと思います。
川柳の器で開いた花を大切にして、この危機を乗り切り、元気で歩みましょう。
「川柳の器の花と咲く未来」 岡崎 守
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【あかしや集】:岡崎 守 選
・あらぁ喜寿もう振り向かぬうつむかぬ 世良田裕子 ・・・ 特選句
・初もぎのいちご遺影の母の笑み 加藤 民子 ・・・ 秀 句
・二メートル妻と離れて月見酒 佐藤 正文 〃
・降りやまぬ恐怖 愛に縋りつく 後藤 信子 〃
・不機嫌なコロナ妻も手に負えぬ 高宮まゆ未 〃
・独り居の自粛に耐えるスクワット 山田幸一郎 〃
・宇宙へと響けショパンの子守歌 小澤 絹子 〃
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【ぽぷら集】:鈴木 厚子 選
・少少の毒はあります護身用 山本 貞子 ・・・ 特選句
・腕枕たまにはほしい膝まくら 東 考矢 ・・・ 秀 句
・人間の敵は人間やるせない 相澤 重明 〃
・思いきり愛したいのにエアーハグ 折原 博美 〃
・何だなんだとスズメが群れる通学路 遠藤 俊二 〃
・負けるものかと夏のドレスひるがえす 高橋かおり 〃
・おはようの声走らせる登校日 野島 淑江 〃
・収まればオールディーズでハイボール 菊地 昌代 〃
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【幌 都 集】:酒井 麗水 選
・後半は塩の加減が処世術 長内 寿一 ・・・ 金鈴抄
・やわらかくなっていい味沁みてくる 石出 栄光 〃
・どんなときも平気でいろと前頭葉 福島あけみ 〃
・母のよな野菊一面墓地埋める 高嶋 克明 〃
・キャンバスに二人で渡る虹を描く 山口 栄子 〃
・物忘れ増えても夫揺るぎない 小山 和子 ・・・ 秀 句
・魔性めくアンダルシアの風と舞 亀貝えみ子 〃
・カラオケをコロナが待たす合言葉 山之内美根子 〃