巻頭言
「こころの彩り」
3月と言う響きの中には、実感としてはまだまだ春は遠いのに、こころには梅や桜の色が開いてくる映像
が浮かんできます。
北海道の四季感とともに生かされていると、冬の厳しさを乗り越えるからこそ春への喜びが増幅され、パレットにこころの彩りがふくらむのではないでしょうか。
一句は吐瀉物だと思ってはいますが、なかなか心の想いを吐き出すのは容易ではありません。勇気のいる
ことであり、一句と闘う自我の強さが求められます。一句に笑いを、意外性を、自分史を、心象を、等と言
われますが、自分の作品に個性を持たせられるかだと考えています。
個性とは、心の彩りみつけることではないでしょうか。そのためには、雑詠作品を主体にして生み出すこ
とが大切です。どうしても題詠の中で生かされていますので。自分のいる作品とは、雑詠の中にあると考え
ています。
雪解けの音を聞きながら、春を待っています。心を躍らせつつ五感を研ぎ澄ませて、足音が少しずつ軽く
なるのを感じています。白から青に移ろいゆく流れの中で、こころの彩りとは不思議なものだと思っています。蕾がふくらむように、心にも春の息吹を満杯にして。
体内の彩り映す一句とは 岡崎 守
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【あかしや集】:岡崎 守選
・脳内にドローンを飛ばす忘れ物 岩間 啓子・・・特選句
・私はわたし 元号は変わります 世良田 裕子・・・秀 句
・昨年もタップリ溜めた核の塵 小原 金吾 〃
・平成の余白に描いた闇の刻 梶川 智志 〃
・元気かい雪の匂いで来るメール 梶川 詠児 〃
・ふわふわの雪に沈んでゆく記憶 田中 しげ子 〃
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【ぽぷら集】:鈴木 厚子選
・来れば来た来なけりゃこぬと母の愚痴 島田 英子・・・特選句
・ふんわりと春が背中を抱きに来る 小関 虎風・・・秀 句
・凛とたつ君にもたれる気はないし 山本 貞子 〃
・ちょこなんと座って母は晴れ着縫う 東 考矢 〃
・真夜中の金魚思案のアブク吐く 井上 サヨ 〃
・転ばない蛇になりたし雪の道 番匠 甚五郎 〃
・寛容の二字をくぐらせ穴を出る 横堀 由紀子 〃
・写メ送る喜ぶ母の皺ふえる 小澤 絹子 〃
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【幌都集】:川口まどか選】
・とんがりをぼかして今日も好好爺 相澤 重明・・・金鈴抄句
・泣きごとは猫に聞かせて恙無く 佐藤 園江 〃
・春うらら土に挨拶したくなる 大坪 寒流 〃
・句読点 万策つきた訳じゃない 小杉山 雅子 〃
・人の為何ができるか模索する 佐藤 好勇 〃
・ゆるやかに生きろと冬のまるい月 原田 つとむ・・・秀 句
・生きる道蛇行するから面白い 中津 遊水 〃
・月光のしみる老体露天風呂 谷野 幸成 〃