2019年3月号

巻頭言

「こころの彩り」

 

 3月と言う響きの中には、実感としてはまだまだ春は遠いのに、こころには梅や桜の色が開いてくる映像

が浮かんできます。

 北海道の四季感とともに生かされていると、冬の厳しさを乗り越えるからこそ春への喜びが増幅され、パレットにこころの彩りがふくらむのではないでしょうか。

 一句は吐瀉物だと思ってはいますが、なかなか心の想いを吐き出すのは容易ではありません。勇気のいる

ことであり、一句と闘う自我の強さが求められます。一句に笑いを、意外性を、自分史を、心象を、等と言

われますが、自分の作品に個性を持たせられるかだと考えています。

 個性とは、心の彩りみつけることではないでしょうか。そのためには、雑詠作品を主体にして生み出すこ

とが大切です。どうしても題詠の中で生かされていますので。自分のいる作品とは、雑詠の中にあると考え

ています。

 雪解けの音を聞きながら、春を待っています。心を躍らせつつ五感を研ぎ澄ませて、足音が少しずつ軽く

なるのを感じています。白から青に移ろいゆく流れの中で、こころの彩りとは不思議なものだと思っています。蕾がふくらむように、心にも春の息吹を満杯にして。

             体内の彩り映す一句とは   岡崎 守

 

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 あかしや集】:岡崎 守選

 

   ・脳内にドローンを飛ばす忘れ物    岩間 啓子・・・特選句

 ・私はわたし 元号は変わります        世良田 裕子・・・秀 句

 ・昨年もタップリ溜めた核の塵     小原 金吾     〃

 ・平成の余白に描いた闇の刻      梶川 智志     〃

 ・元気かい雪の匂いで来るメール    梶川 詠児     〃

 ・ふわふわの雪に沈んでゆく記憶    田中 しげ子    〃

 

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【ぽぷら集】:鈴木 厚子選

 

  ・来れば来た来なけりゃこぬと母の愚痴   島田 英子・・・特選句

 ・ふんわりと春が背中を抱きに来る    小関 虎風・・・秀 句

 ・凛とたつ君にもたれる気はないし    山本 貞子    〃

 ・ちょこなんと座って母は晴れ着縫う   東  考矢    〃

 ・真夜中の金魚思案のアブク吐く     井上 サヨ    〃

 ・転ばない蛇になりたし雪の道      番匠 甚五郎   〃

 ・寛容の二字をくぐらせ穴を出る     横堀 由紀子   〃

 ・写メ送る喜ぶ母の皺ふえる       小澤 絹子    〃

 

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【幌都集】:川口まどか選】

 

 ・とんがりをぼかして今日も好好爺  相澤 重明・・・金鈴抄句

 ・泣きごとは猫に聞かせて恙無く   佐藤 園江    〃

 ・春うらら土に挨拶したくなる    大坪 寒流    〃

 ・句読点 万策つきた訳じゃない   小杉山 雅子   〃

 ・人の為何ができるか模索する    佐藤 好勇    〃

 ・ゆるやかに生きろと冬のまるい月  原田 つとむ・・・秀 句

 ・生きる道蛇行するから面白い    中津 遊水     〃

 ・月光のしみる老体露天風呂     谷野 幸成     〃