2019年2月号

巻頭言

「地吹雪」

 道産子として生まれて、77年歳月が流れました。若い時には、何歳まで生きられるのかなどは気にしていませんでしたが、亡くなった両親の年齢を越してしまうと、実感として考えるようになってきました。

 超高齢化社会、少子高齢化などの時代背景を意識させられながら、地吹雪の中で生き抜く姿を描いております。年々と除雪が大変となり、雪国で生かされる厳しさを感じるようになりました。でも、四季感の素晴らしい北海道で一句を生み出す楽しみを、皆で共有できることに感謝しています。

 地吹雪に耐える、シバレと生き抜く、冬があるから春が来る。その間隙を土台にして命を刻み、一句を積み上げることができるのだと思っています。さて、2025年には、認知症患者が730万人になると推計されています。川柳で惚け防止を、脳の活性化のために大いに活用すべきだと考えています。

 心に若さを、つながりの和と輪を、人生経験に裏打ちされた強靭さを、そして自分史の一句を。子供の頃から体験してきた地吹雪の絵が連綿と背中に張り付いているのを感じます。それがあるから生きる力が湧くのでしょうか。

             年輪を刻む一歩と地吹雪と     岡崎 守

 

***************************************************************************************************************************

 

【あかしや集特選】:浪越 靖政選

 ・専用席おじいさまから譲られる     源津 みち子・・・特選句

 ・たたむときかすかに魚の匂う空     澤野 優美子・・・秀 句   

 ・心変わりゆるいカーブで願います    世良田 裕子    〃

 ・たましいの深いところで結びあう    藤沢 美津子    〃

 ・ノクターン泣けば揺れてる耳の裏    大久保 貴美子   〃

 ・広い胸私の変化球受けて        岡本 恵美子    〃

 ・すき間風するりと心盗まれる      嶋口 幸美     〃

 

 ***************************************************************************************************************************

 

【ぽぷら集】:佐藤 芳行選

 ・シナリオを自分で書けぬヒトの群れ   東 考矢・・・・・特選句

 ・終活の心の余白残し置く        成田きさらぎ・・・秀 句

 ・やり残しまだまだあって指を折る    番匠 甚五郎    〃

 ・みな帰り鬼が一人のかくれんぼ     小林 ともき    〃

 ・主義主張せずに笑顔の深い皺      片山 葉一     〃

 ・真実が引き出しの中貝になる      山本 貞子     〃

 ・明日あるを疑わずに組む予定表     高野  怜     〃

 ・自分史のイフの一つや二つなど     折原 博美     〃

 

***************************************************************************************************

 

【幌都集】:鈴木 英雄選

 

 ・平成も元気に終えるスクワット     出雲 恵美子・・・金鈴抄句

 ・聞く耳をまずは洗って習い事      福田 正響     〃

 ・冗談へ一つや二つ未練埋め       羽生 良子     〃

 ・無欲にはなれず断捨離四苦八苦     山口 栄子     〃

 ・脱ぎ捨てた殻が笑って邪魔をする    高橋かおり      〃

  ・まだ三度酔いいつ転びつ冬の月     櫻井 裕太    秀 句

 ・スキップも加えて朝の白い道      遠藤 俊二     〃

 ・豆を食べ心に潜む鬼を撃つ       竹内  潔     〃