川柳の上達法 ②定 型
1)定型「形式用語」
5・7・5音の定型を守ることは、川柳にとっての基本である。それは料理に例えると、上5は材料であり、中7は
調合であり、下5は味付けである。これらの中から一つの要素でも欠けた場合には、いかに優秀な料理人とい
えども、おいしい料理は作りえないであろう。
定型を守ることは、句のリズム感と句の姿に気を使うことである。句会などでは川柳は耳で聞くのであるから、
聞く者にとって心地よいリズムが必要となる。また柳誌などでは眼で見る川柳となるので、漢字やひらがなや
カタカナの文字がバランスよく配置されているかが重要となる。それは句姿の美しさであり、色紙に書いたとき
のように一枚の絵となる必要がある。
2) 定型の形
定型正格 勇退を決めて仮面の髭をそる(5・7・5) ・・・ 二川 敏幸
変格 星が流れたところまで行ってみる(7・5・5) ・・・ 土橋 螢
準格 立ち枯れのひまわり母の残像よ(5・4・8) ・・・ 加藤 かずこ
非定型変脚 顔顔顔 音音音 眠る(15音) ・・・ 斎藤 大雄
多音 万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た(23音) ・・・ 鶴 彬
寡音 元旦―暮る(6音) ・・・ 川上 日車
3) 何故に定型か
定型を守るためには、5・7・5音の結びつきをいかに大切にするかである。そのためには、以下の点に留意する
必要がある。
イ) 一句を吐き出す前に、頭の中で素材のまとめかたを整理すること
ロ) 整理された一句を表記して、推敲をすること。
ハ) 上5、中7・下5の文字を、漢字、ひらがな、カタカナを駆使して定型化を図ること。
ニ) 助詞の大切さを体で覚えること。
ホ) 意味重なりの言葉を使用していないかをチェックすること。
ヘ) 字余りや字足らずになっていないかを確認すること。
ト) 単なる説明の句ではないのか、と疑問を持つこと。
チ) 声に出して読み、リズム感の良し悪しを確認すること。
リ) 文字の配列に注意し、句姿の美しさを眼で確かめること。
ヌ) 想像を豊かにして、人間の想いを追及し表現すること。
4) 定型への推敲
例句)秋の雲破れ去った恋乗せて去り
中8になっている。雲は視界から消え去るもの。推敲の事例。
・秋の雲破れた恋を乗せて消え
・秋の雲やぶれた恋をのせて消え
・秋の雲千切れた恋を風と消し
・秋の雲悲しい恋と胸の風
・秋の雲かなしい恋よ風と消え
秋の雲を見つめて、恋の悲しみを表現したいと考えたときに、どのような物語を展開させていくのか。
破れた(やぶれた)、千切れた(ちぎれた)、悲しい(かなしい)、などの言葉を考え、漢字がいいか、ひらがな
がいいか、を確かめて句姿を整えて推敲をしていくことが大切である。
吐き出された一句には、どこかに落とし穴があることを肝に銘ずること。面倒くさがらずに句を見直す訓練を
積み、表現力を高め、語彙を広げていくことが佳句を作り出す道へと結びついていく。
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